『home』
造形大にて田中すみれさん作・演出の『home』鑑賞。
これにはびわ湖PJ出演者の子たちが出ていてお誘いを受けていたので。
行ったらご招待扱いにしてくれていて恐縮しちゃったよ。ありがとね~。
客席は上手下手サイドに分かれていてセンターぶち抜きで舞台へのアプローチ。
座るとこ、悩む。
一番前のできるだけセンターに近いところに座った。
通路側だから転落防止に柵があって少し目線が邪魔だけど。
通路にはサスライトに照らされた白い布状のモヤモヤしたものが置いてある。
舞台を見下ろす感じに客席が組んであり、舞台奥には半月のスロープが。
手前には上手奥、下手前(両方ともセンターライン寄り)に花壇風のもの。
黄色のガーベラ様のお花が植わってる。造花だけどね。
テーマははっきりとは書いていなかったけれど「もし今、私が死んだら」かな。
ある種の鎮魂のようでもあり、自伝的な内容でもあり。
作者の感覚ではあの世はこういう感じなんだろうか。結構ポップ。
衣装はみんなブルーを基調にしていて若者らしくてとてもよく似合っている。
幼少期、バレエを「習わされていた」描写から始まり、その顔の無機質なこと(笑)
なるほどな~。そこから長じて学生時代、それぞれの足跡。
色々な思い出と共にあちら側へ行ってしまった人への思慕。
そこからの「もし今わたしが死んだら」の描写。そんなに自虐的にならなくても
いいよ~と声をかけてあげたくなる感じだったけれど、きっと本人はそう言う風に
思われるだろうな~というのを表現しているのだろうな。
はっきりいって展開はわかりやすい。たぶん、踊っている人には。創っていると尚更。
だからどういう風に決着をつけるのかに興味があったけれど、そこには背伸びがなく
分かった風なことを付け足しもせず、等身大だったところにとても好感が持てたな。
そしてそれは自分を顧みてもそうなのかと反省材料としたい。
上から垂れたロープには3つずつお花がつけられていて、美術っぽくもあるが
ストーリーが進行していくにつれてその先につけられたフックに靴をぶら下げて
いくのだけれど、途中から靴下になるところが微笑ましかった。洗濯モンかよ(笑)
いやでも、そこが等身大で好感度大。
まだ20代前半の彼女たちにとって足跡は靴の後には靴下を並べるくらいしか無い。
これが80代とかなら靴だけでもいっぱいになるだろう。
最後にはすみれさんが創っているグループ名「siro」にふさわしく衣装が白に。
固定のメンバーはおらず、その時々でsiroのメンバーとなるシステムのようだね。
名古屋ではAZといっしょに組んで「siro」として出演していたし。
技術は申し分ない、中にはうん?と思う人がいなくもなかった充分な許容範囲。
バレエを知っているか知らないかは顕著なものであるなぁ。
だからダンスとしての基礎のモノサシとしてバレエがあるのはあながち間違いでは
無いような気がする。もちろん表現においてはそこに重きは置かれないとしてもだ。
ただ、コンテンポラリーにしてもジャズにしても、もちろんクラシックにしても
バレエというもの、技術というものをどういう風に使うかが重要なのだけれど。
初めには延々とバレエのテクニックが展開されて「だからなに?」が頭を占めたが
その無機質な顔と徐々にコンテンポラリーの様式が入っていくにつれ、表現として
これがしたかったのかとは思えたけれど、ソロじゃなくて5人での作品だから
なかなか解読作業に至るまでが長く思えた。そしてごく個人的なテーマに沿ってると
分かってからは「じゃ、このダンサー達、後の4人はなんじゃ?」となってしまって
分身のような、パーツのような。何を考えて踊ってたのか今度、聞いてみよう。
とりたててテーマやいろんなものに影響はないんだけれども、もし私がダンサーなら
この作品にどう立ち向かえばいいのかを悩んだような気がするなと思ったので。
それにしても1時間強のコンパクトかつ真摯な作品を見せていただけて良かったわ。
若いっていいな~という感想しかでてこない昨今です(失笑)