コミックオペラ『ミカド』
びわ湖ホールにて『ミカド』観てきました。勉強&お楽しみ。
オペラははるか昔にダンサー役としてだけ出演したことがあるのと
ダイジェスト版みたいなので、それもまたダンサー役としてだけ。当たり前だけど。
最近「歌って踊る」場合の踊る部分を担当している私としては「歌いながら踊る」
という基本的な呼吸を勉強しなくちゃいけなんじゃないだろうか、と思っていた。
それもあったのと、人材育成講座でのこのオペラへのお誘いがあった時から
気にはなっていたけれど6日のスケジュールがギリギリまでわからなくて。
ほぼ飛込みくらいの感じで行ったけれど、とても良かったので覚書。
前日ぎりぎりに予約をしたため席は2階席最後方の少し上手側。
かなり見下ろす感じ。でもちゃんと計算されていて前の人の頭を越して見える。
大ホールでのオケピは知ってるけど中ホールでは初めて見た。
撮影、当然ながら禁止なので開演前にパチリ。
満席の入りで、まずはそのことにびっくりした。オペラって人気あるんだね。
これはびわ湖ホール自体が自分のところでオペラを制作し、上演し、集客を
し続けてきたという不断の努力によるもの。素晴らしいね。改めて実感した。
もちろん、助成金やスポンサー契約などの色々な支援はあるだろうけども。
開演前には演出の中村敬一さんによる解説。結構な説明だったので、これって
ネタばれなんじゃ?と思ったけれど、上演を観るとそれは下地として有益だった。
なるほど、こうして敷居を低くするんだね。ダンスではどうだろうね。
ミュージカル音楽でいうところのオーバーチュアがまずあり、10分くらいか?
いよいよ幕が上がる。と、そこには「外国から見た日本」のイメージがくっきり。
う~む。外国産のジャポニズムを日本人が日本語で上演。幾重にも入れ子構造。
一見、新京極の土産物屋かと見まごうようなキッチュな色使いであふれている。
始めは日本ってこういう国です、みたいな軽い紹介なんだけど、そこへ出てきた
出演者の目にも鮮やかでかわいくて起き上がりこぼしのような出で立ち!
一気に心をわしづかみにされた。ゆるキャラやん!これ。飛脚便色でした。
そして次々と登場人物が現れるが、まぁ~とにかくポップでキッチュ。
うわ~だ~いすき!そうだな~舞台全体がサランラップCMのクマさんだ。
思わずパンフレットで衣装さんの名前をチェック。下斗米雪子さん。
難しい字だな。「しもとまゆこ」さんと読むのだろうか。振付は佐藤ミツルさん。
とにかく衣装が奮っている。声楽家の方だから皆さん結構ふくよかだけど
冒頭の市民たちは窓に並べたいほど愛らしくて、女学生たちは見た目でギャルを
表現できてる。それぞれの役どころに応じての色使いはとてもしっくりきてる。
「ミカド」というタイトルだけど主役は帝の息子のナンキプー。
ミカドさんは最後にしか出てこない。これが暴君でね~。自分が法だと思っている。
死刑を楽しみにしているような奴ですよ。時代を反映(風刺)してたんだね。
これを創った作者はイギリス人で19世紀末。
切り裂きジャックが世を震撼させていた時に上演されていたそうだ。
風刺の効いた内容だけに、今の世相(日本)を反映させてありました。
防衛大臣辞任とか白紙の百万円とかハ~ゲ~ネタもね。全2幕なので途中休憩は20分。
劇終に向けて大団円になっていくんだけど、最後の最後で「え?」と思うような
ビジュアルに様変わり。・・・これ必要?確かに意表を突かれて面白いけど。
必要かどうかでいうと「いらん」感じはするな。
演出の遊びなのか、それともコミックオペラというくくりでの「外し」なのか。
別にそこまでの衣装のままでよかったやん、と思わずにはいられなかったけど。
なんというか、翻訳ものなので日本語になじまない表現とか、理解できない
脈絡とかがあるんだけど、ざっくりいうと思考回路が違うんだな~と思った。
ストーリーでいうと暴君であるミカドが「公衆いちゃつき罪」で死刑を発令するが
それによって家出した自分の息子が死刑に合う羽目になる。
それをどうして回避するというのはやる方もやられる方も考えるのだけれど
そこはもう言葉遊びの世界みたいなもので、結局はへ理屈によって大団円となるが
な~んかね~その思考回路がとても違う。あえて言えば中国的でもあって。
途中からやっぱり日本は正しく理解されないアジアの端っこなんだと思った。
クラシックまではいかないにしても古い外国産のオペラだから、それはそれとして
当時の感覚なのだけれど、その片鱗はまだまだあるはずと思うよね。
自分の立ち位置からして振付を気にしながら観ていたけれど、歌いながら激しい動作
というのはあまりなく、立ち位置は変わるけど基本的には横滑りであまりタテノリは
なかった(笑)ま、オペラだもんね。
でも結構みなさん動き回ってらっしゃいましたよ。どこまでが振付でどこまでが演出か
ちょっと見分けがつきにくかったのだけれど、衣装と出で立ちも相まって
狂言を見ているような気になったことが度々あったわ~。脳が混乱したね。
ただ一つの振付だけ、どうしても出演者になじんでないんだな~と思えるところが
ありまして。なるほどな~こう見えるんだな~と勉強させていただきましたです。
みなさんダンサーではないので、それはそうなんです。仕方ないんです。
「踊りに踊らされている」ってやつですよ。それはダンサーであっても気をつけなきゃ
いけないところなんですが、普段踊り慣れていない人がこれをやるとバレバレです。
やっぱり演者はなんとしても「自分のもの」にしなきゃいけないんです。
たぶん振付の仕上がり自体、その場面のその振付が遅かったのかもね。
いやいや難しいもんですね。私も(米原)気を付けて振付しなきゃ。
いずれにしてもとてもいい刺激をいただきました。観に行けて本当に良かった!