ホロリときました

キケン

キケン

某県某市にある、成南電気工科大学にある部活の一つに『機械制御研究部』はある。
略称、機研(キケン)。この部が引き起こした数々の伝説から、畏怖の念を持って
「機研=危険」と呼ばれていた。この物語はそのキケンの黄金期の話。
いわゆる男子の物語。いや〜面白かったですよ。軽めで読みやすいし。
それにしても、この人の書く物語はどうしてこんなにビジュアルが立つのだろう。
これってすごいことだ。
平たいことが安直で程度が低いこと、みたいな誤解があるけれど、それでは裾野は
いつまでたっても広がらない。
多分、甘いところはあると思う。でも現実が世知辛い分、読書くらい幸せでありたい。
主人公は個性豊かなキャラの中のひとり。
恋人に昔話を語り聞かせている体で数々のエピソードが進められていく。
なんだか臭ってきそうなもっさりした感じもありつつ、工学系と言うことでやたら
機械系に強くメガネをかけてそうで、半端なく頭がよさげな設定であったり
挟まれるエピソードにこちらもぐんぐん引き込まれ、いわゆる男子の輪の中に
女子は入り込めないような、ちょっとした寂しさを感じてみたり。
意外にも最後のくだりでグッと来て、涙ひとすじ流るる、みたいな。
この「今の自分」が立つ位置と「かつて自分がいた場所」との距離感の書き方に
これはもう男女問わずあると思うし、その寂寥感みたいなものは誰もが共感するはず。
うむ、これもお薦めの一冊ですよ。