生と死のカオス

ニットキャップシアターの新作『カムサリ』を観る。アイホールにて。
今回も「古事記×団地」のシリーズだそうな。
懇意にしているからという理由ではないところでニットの芝居は好きだ。
ニットのホームページに過去からの作品を扱ったrecordというコンテンツがあるが
実にワタクシ第一回目から鑑賞している。
もしかしたら劇団員の誰よりもニットキャッパーかもしれないよ(笑)
いわゆる(いかにもお金のない)学生演劇からの始まりで、雨後の竹の子よろしく
当時も今もそんな劇団は掃いて捨てるほどある。
団員が離散集合することも多く同じメンバーで続けている劇団と言うのはなかなかない。
ニットですら、もうオリジナルメンバーは座長のごまさん以外いなくなってしまった。
しかし劇団はしっかりと小劇場の世界で生き残ってきた。
数々の賞も受賞しているし、絶えずアレコレと企画があり、またゲストとして
劇団員もあちこちで何かに参加していたりする。進化しているのだ。間違いなく。
そして横にも縦にも広がっている。それがすごいと思う。
作品の根っこにあるのはやはり座長であるごまさんの人生観だろう。
ごまさんは古事記が好きだという。いくつかの作品はあるモチーフが色を変え
全面に使われることもあればちょこっと顔を出すことがあったが「団地」という
シチュエイションは頻発する。ごまさんの原風景であり、またいろんな種類の人間が
壁や階や棟を隔てて暮らしているというところに底知れぬ魅力があるのだろう。
カラフルでファンタジックな演出が多くなってきている近年のニット。
今回はえらくプリミティブというか、かなり手作り感あふれるアフリカ調。
カラフルさにおいては前回の方がカラフルだったように思うが、今回は素朴さを感じた。
生と死を扱いつつ、重くならない。
元の話がある(古事記)だけに、遊びがあってもちゃんと着地する。
時間軸や場所や色々なものが混沌となりなんだかわけのわからない感じがありつつも
一つずつのエピソードとドラマがからみあって、感情が交錯する。
前回の「少年王マヨワ」ではどちらかというと死の匂いが強かったが
今回は残酷さがありながらも底抜けにハッピーエンドだった。祝祭だった。
ひとひに千人がくびられてもひとひに千五百が生み出される、を体現したドラマ。
いやぁ、今回もまたよかったなぁ。次はまた何が生み出されるんだろう。
次の舞台が楽しみになる劇団、ニットキャップシアター。
みなさんもぜひ一度ご覧ください。