ギャップ萌え

このクソ忙しい中、外せないニットキャップシアターの舞台を観に行く。
劇団初めてのギャラリー公演ということだが、今までもすごく狭い空間でやったりも
あったので、特に心配はないだろうと思う。どのように空間を作っているか興味がある。
この劇団は毎回様々な工夫を重ね、どんどんカラフルになってきた。カオス的でもある。
カラフルでパワーとスピードのある形式にもかかわらず、その内容はピュアだったり
切ない路線だったりもして、普段の関係の云々ではなく私はとても好き。
重いテーマでも重っ苦しくないのも魅力。
さて、そのニットが今回は「サロメ」を手掛けるというのだ。サロメ、ね。
もちろんやったことは無いのだが、踊りの題材としてよく使われるせいか身近である。
オスカーワイルド戯曲が有名だが、やはりその内容が強烈なのだろうと思う。
すぐに絵が自分の中で浮かぶと同時にかすかな嫌悪感が実はあったり。
ダメなのよね〜、こういう情念系。さてニットが演るとどうなるんだろう?
ごまさんはアレをどういう風に料理したんだろう?と楽しみにしながら出かけた。
ギャラリーは細長い空間を縦に割り、舞台と客席に分けてある。客席はわずか2列。
今日は最終日。平日のマチネだったが満席。やるなぁ、ニット。固定客がついている。
えぇ、私も立派なニットファンですから、固定客として数えてください。
美貌の王女サロメ、預言者ヨカナーン、エロド王、エロディアス…。
ここしばらくのニットの手法、仮面が大活躍。
もちろん役者がセリフを言うのだけれど、仮面のお蔭で不思議な雰囲気が増幅される。
役者は特に際立った衣装、と言うわけではなく、どちらかというと普段着に近い。
もちろん、ちゃんと計算はされていると思うが。でも仮面があるので自然とこちらの
想像力が働く仕掛けになっている。これ、役者が生身だときつかったかもしれない。
なんたって外国の話ですから。どうやっても日本人がやるには無理な場合がある。
それが仮面のお蔭で見事に緩和されている。やるなぁ、ニット。
そして、冒頭からみっちりのセリフ劇。しかも古典的な言葉の応酬。
これ、大がかりな舞台と舞台装置でやられた日には死ぬほど退屈するやつだ。
それが意外にも、あんなに小さい空間で飽きないのは、微妙なバランスのお蔭だ。
仮面による演技。過剰過ぎない役者のたたずまい。小道具。生音でのBGM。
例によってヨカナーンは斬首され、銀の盆に載せられてサロメへ差し出される。
ストーリーに大幅な変更はない。けれどもいわゆる業というのか、そんなものが
情念を上回っていた。うぅ〜良かった〜助かった〜(笑)
それぞれの身勝手さのようなものがよく表れていた。
唯一、エロド役のごまさんがバナナを持ってサロメを追いかけ回しているシーンが
若干エロかったが、あれなら許容範囲(笑)
そうそう、このサロメには「フルーツスキャンダル」という副題がついていて
その謎は私には最後までわからなかったけど。
食べる、と言う行為に何かを託していたのか。
食べていたのはサロメとエロディアスのみ。つまり女性だけ。
サロメ役の市川さんが途中でリンゴを食べていたけれど、
あれは本来ならザクロなんだろうな。あぁザクロ食べたいな。
軽そうなタイトルの割に重厚感がたっぷりだった。