柔の精神

下町ロケット

下町ロケット

内田センセの萩シリーズを読了したので。
主人公の佃航平は元・宇宙開発センターの研究所でロケットに携わっていたが
成功すれば世間にその名を知らしめることになった打ち上げの失敗で引責辞任
今は亡き父親の町工場を継ぎ、研究者としてのプライドを元手に社長となる。
小型エンジンの開発を中心として手堅く商売しつつも、そのクオリティの高さで
業績は右肩上がり。けれども所詮(!)中小企業、この不況の折とはいえ大手取引先
からの切り捨てや融資を渋る銀行、悪名高い大企業の特許にからむ経営戦略に
はまり青息吐息。善意ある周囲のお蔭で何とか乗り切るも、今度は開発したエンジン
にからむ大企業との駆け引きやプライドをかけた闘いが繰り広げられる…。
とまぁ、いつもながらのドキドキジェットコースター小説です。
前半は池井戸小説の定番である取引打ち切りや銀行の貸し渋り場面があり
何冊も続けて読むと食傷気味かなぁと思いつつも、お金がらみのことはオハナシとは
いえ、すっごくドキドキする。経営者ってホント大変。
部下や家族との意思疎通の問題や、献身的な経営であってもそれが伝わらなかったり。
主人公の孤独に身をつまされることしばしば。
池井戸小説のすごさは一人一人のキャラに背景がきちんとあることだと思う。
多くは語られないにせよ、悪者には悪者なりの言い分や立場がありもし、
巻き込まれつつも真摯に臨むことや、努力は裏切らない、というようなことが描かれ
単なる勧善懲悪で終わらないところが面白いんだなぁ。元気でる。