恋爺は42歳

仇敵 (講談社文庫)

仇敵 (講談社文庫)

元エリート銀行マンだった主人公は陥れられ銀行を辞職。
今では小さな地方銀行の庶務行員となっているが、初めて人生の豊かさを感じることが
出来ているという設定だ。
しかし、元ライバルからの一本の電話、そしてそのライバルの死を通して仇敵への
復讐を誓うという筋書きだが、これも短編をつないであるらしい。
エピソードはそれぞれの章にあるが、根底にはひとつの物語が流れている。
金融ミステリーというには悪い奴は最初から分かっているので犯人探しではない。
巧妙な資金操作による隠蔽工作を主人公が一つずつ解きほぐしていく面白さや
暴力による脅しの場面があったりもする薄気味悪さや一方では市井の人の情の厚さ
なども描かれていて金融専門用語にはとんと魅力を感じない私でも
物語の面白さに惹かれてページを繰る手が止まらない。
そういえばいつも行く銀行にも案内係の女性と男性が控えているなぁ。
あの人たちこそ「庶務行員さん」なんだなぁ、と知る。
そう思うと近所の某大手銀行もそんな舞台に見えてくるのだった。
どこの銀行もこんな私腹を肥やす上司ばかりだったらたまったもんじゃありませんが。
それにしてもやはり銀行マンってエリートなんだねぇ。
複雑怪奇な隠蔽工作、思いつく頭がすごいと思う。世界平和に役立てようよ。