八十とみすず

ストーリー・セラー

ストーリー・セラー

もう間もなくコンプリートでまつり終了となる。あとはデビュー作「塩の街」だけ。
ひょんなことから作家になった女性の二本仕立ての物語。
おおまかな背景を同じにしてあるけれども、一つは女性が病気になり、もう一つは
女性を支える男性が病気になるパターン。
どちらも女性がどえりゃぁ激しやすい性格である、ってことと男性の機嫌がいいこと。
朝ドラ「カーネーション」の糸子と旦那のようでもある。女傑。
この作家になる女性、一つ目の話ではひたすら周囲には内緒で紡いでいた物語が
ひょんなことで後に夫となる男性に読まれてしまうのだが、その場面の描写で
女性が推敲をしてもいない物語を勝手に読まれたことで激昂するところがあり
男性にしてみたら冒頭からぐいぐい引き込まれて読める(自分にとって)素晴らしく
面白いものを、どうしてそれだけ読まれることを拒むのかの理由が理解できないでいる。
けれども、その女性が語るにつれ、過去のトラウマが明らかになっていく。
学生時代に所属していたサークルで彼女の文章は「てんでだめ」「物語になってない」
だのと難癖をつけた部長がいて、ことごとく彼女の作品を貶していたと。
それで「自分の文章は認められるに値しないもの」という卑屈な刷り込みをされた
と言うような設定。
嫉妬、ですね。醜いですね。自分より傑出した才能を認めたくなかったんでしょうね。
しかしその後、作家になって次々と書く本がベストセラーになり、有名人となった彼女。
ここでもその元サークルの奴らからの嫌がらせが炸裂。いやだねぇ。
このエピソード自体は物語の中の一部分だけれども、金子みすずさんを思い出した。