見えすぎる人

ヒア・カムズ・ザ・サン

ヒア・カムズ・ザ・サン

二作品収容のなんだかお得感のある本。登場人物はあまり多くない。
編集業界に身を置く主人公は少しだけ特殊な能力の持ち主。
想いのこもったものに触れると、その背景まで肌でわかってしまう。
いわゆるサイコセラピスト。その能力のせいなのかはわからないが「聡い子」である。
人の感情に異常に気が付きやすいため、つい先回りをして居心地の悪さを回避する。
それが彼の劣等感でもあった。その彼の彼女(カオル)は何事にも一生懸命。
ある時「死んでいた」はずのカオルの父親がアメリカから帰国することになる。
日本で正当な評価を受けられなかった彼はアメリカでの栄光を手にして帰国するが
カオルは自分と母親を棄てた父親を許すことができないでいる。
登場人物はほぼ同じで違う物語に仕上がっている「パラレル」も収容されている。
どちらの物語もとても面白く読めたし、ちょっぴり泣けた。
それにしても確かにこの主人公みたいに「見えすぎる」のは大変だろうと思う。
普段はそれを遮断しているようだが、それが控えめであればあるほど却って評価が
高くなってしまったりして、彼は内心ますます居心地が悪い。なるほどなぁ。
人の心の繊細さや劣等感と言うものを考えさせられる一冊だった。
劣等感、劣等感…あえて考えないようにしているなぁ普段は。
そんなん、考えたら凹むばかりやん。