チューボー

久しぶりの瀬尾さん。

あと少し、もう少し

あと少し、もう少し

主人公の通っている中学校は駅伝県大会への常連校。
主人公は自分の時は上位入賞、とそれを目指して陸上部を人一倍盛り上げてきた。
しかし春の異動で県大会へ導いてくれるはずの顧問が居なくなり、その後釜は
美術の教師で陸上のことなど何もわからないという頼りない女性教師だった。
覇気のなくなった陸上部は駅伝に出るメンバーにも事欠く始末。
部長である主人公は駅伝に出るため自分と後輩の他に後4人集めなければならない。
かき集めたメンバーは「いじめられっ子」「ヤンキー」「お調子者」「クールを装う奴」
それぞれの背景にはそれぞれの事情があり、やんわりとつながってゆく人間模様。
頼りなかった教師も生徒たちと共に段々と成長していくようで、やはり大人。
なかなかに確信を衝く発言をしたり大きな気持ちで見守っていたりするのだ。
ぐいぐい引っ張っていくタイプではないけれど、その頼りなさによって却って生徒が
自主的になったり、それなりに団結したりするという効能もあるらしい。
著者は現役の先生だということで、そんなに刺激的な話が展開されるわけではないが
性善説にのっとったストーリーはどこかしらホッとする。
それに中学生の(特に男子)の心情が丁寧に描かれており、光の部分ばかりではない
深みもあるところが読んでいて面白いところ。
ま、深みって言っても5センチくらい、かな(笑)
深刻そうでもチューボーな、というか。現実的にはもっとヒネてどうしようもないのも
いるだろうけれど、そういう意味でも男の子っていう対象が似合うのかもしれない。