コンク「交響曲第6番」初演


16時からという「なぜその時間?」と思わされる開演時刻。
昼ご飯を食べてからは少し余裕があり、終了後は夕食をどこかで摂れる、という配慮か。
昼ご飯食べてすぐでは眠くなる人続出を懸念しての設定かもと穿った見方をしてしまう。
開演に先立ち登壇されたのは、あれ!西村朗先生ではあ〜りませんか。
実はワタクシこの先生の音楽も好きでCDも吉松先生と並んでほぼコンプリートしている。
いつかやってみたいと思っている作品に使用する音楽は西村先生のものなのだ。
うぅ。なんということ。目の前にご本人がいらっしゃるとは!
パンフレットを見ると今日の音楽を演奏する【いずみシンフォニエッタ大阪】の
音楽監督を務められているではないか。知らなくてすみませんでした〜。
今回の演奏会はいずみシンフォニエッタ大阪の定期演奏会第31回目のコンサートで
「新・音楽の未来への旅シリーズ」の一つだそうだ。指揮は飯森範親(のりちか)氏。
企画としては映画音楽の巨匠、イタリア人作曲家モリコーネとロータの音楽を取り上げ
その後、今回のシリーズのための委嘱作品として作曲された吉松先生の第6番を上演。
吉松先生と西村先生は公私ともに親交が深く、時折対談されたりもしている。
一緒に呑んだ、ということも時折ブログに書かれていたりする。
初めは指揮者の飯森氏と西村先生の今回の演奏に関するお話。
あれだ、飯森氏は遠目ダイアモンド・ユカイ氏に激似。なんだかロックな佇まい。
その後、吉松先生登場。
吉松先生と西村先生の、軽妙にして洒脱なトークはとても練れている印象。
やはり普段から仲が良いのであろう。いつもは突っ込み役の吉松先生、この日はボケ。
これはやはり大阪と言う地、特有の役割分担であろうか(笑)
西村先生の突っ込みも冴えわたり、ファンには夢のような前説であった。
エンニオ・モリコーネ ヴィヴァルディのための4つのアナコルーティ
11弦楽器のための、とある。ティンティナブリあり、不協和音ありのモノトーンの
静かな不気味さを感じさせる音楽だった。
ニューシネマパラダイスの郷愁とは正反対の位置にあるなぁという印象。面白い。
曇天の下のカラスを想像しながら聴いていた。静かで緊張感のある音楽だったな。
ニーノ・ロータ トロンボーン協奏曲
ゴッドファーザーの音楽を書いた人。トロンボーンソロはN響首席奏者を務めている
新田幹男さんが担当。関西出身だそうだ。(チャンかわい似)
きっと超絶技巧なんだ、と思う。でも素人には普通に聴こえてごめんなさい。
吉松先生の音楽同様、聴く方にはすんなり心地好く聴けても演奏者には地獄の苦しみ。
さっきのモリコーネが重くて暗い分こちらは明るく感じられた。編成もさっきより増えた。
でもトロンボーンって不思議な楽器だな。右手の伸長だけで音程が決まるんだもの。
なんだかとてもフィジカルだな。私たちがアームスのポジションを覚えるのと同じね。
吉松隆 鳥は静かに…
吉松氏が寄せたプログラムノートによると「弦楽アンサンブルのための短い悲歌として
書かれたこの曲は、一羽の鳥の死を仲間の鳥たちが静かに黙して囲んでいる…といった
イメージから生まれたもの」とある。先生の初期CDにも収録されている。
のっけから「馴染みの」吉松サウンド炸裂で涙腺崩壊。
CDでも泣けるが、生はイイなぁ。空気が震えるもの。充分に世界を堪能した。
終盤の静かなところで咳が出そうになって苦しかった。耐えた。
吉松隆 交響曲第6番 鳥と天使たち(初演)
こちらものっけから吉松サウンド。ノリの良い方の。
アトムハーツクラブやタルカスなどのジャズっぽいノリも随所にあり
またピアノの優しい旋律あり、オカリナやトイピアノなど、いわゆるオモチャの楽器を
散りばめてある第二楽章はさながらオモチャ箱であった。
全体的にオモチャ箱をイメージして創られたとのことだが、やはり鳥の部分も多く
あの、吉松氏特有の走って行って崖から飛び立つような浮遊感も随所にあり
こちらの気持ちも一緒に大空へ飛び立つこと数回。気持ちいい〜。
演奏者には変拍子の嵐でとんでもないことだろうけれど、聴いていると楽しい。
なんともカラフルでセンセイらしい。カラフルに輪をかけてホログラムのよう。
ぴかぴか、きらきら、ぱたぱた。
先生の解説によると今回は「女の子」だということで、確かにそうかもしれない。
旋律がゴツゴツしていないからね。フルートの旋律は篠笛や龍笛に聞こえる。
このあたり平清盛風なのか。それに初音ミクに歌わせようと思っていた、という
箇所も何の音かはわからないが、それ風に聴こえるようになっていたのがびっくり。
やるぅ〜!いずみシンフォニエッタ大阪のみなさん!
サウンドもクリアで、う〜ん、実は(ここだけ残念だな…)と思ったところがあるが
楽器を演奏出来もしないものが言うのは不遜すぎるのでやめておく。
しかし、中でも金管楽器セクションの方々、年齢がお高め、そうに見える。
先生の容赦ない割り振りのせいで金管楽器セクションの方々青息吐息(笑)
舞台の下手側の席だったので、右斜め方向にちょうど金管楽器群が見えるのだ。
みなさん(特にトロンボーンやトランペット)自分のところが終わったら放心状態になる。
そんな様子も楽しみながら、いつまでも終わらないでほしいな〜と思いつつ聴いていた。
あ〜でも短いんだよね、この曲。もう一回聴きたいなぁ〜。
この日は録音もされていたそうなのでいずれCD化はされるはず。楽しみ〜。
終演後、無事に河村さんとも会えてリハーサルにも立ち会った彼女の話によると
「リハより絶対本番の方がよかった!」とのことだったし
特に大きな物音がたったりもなかったので本番のモノがリリースされるだろうか。
終演後ホワイエにて西村先生を何度も見かけたがあまりにも忙しそうにされているので
ご挨拶はまたの機会にと見送ることにした。吉松先生を探すが姿が見当たらず。
河村さんについてきてもらい楽屋を訪ねるも、楽屋にもおられず。
もう一度ホワイエに引き返してやっと会えた。お祝いを手渡し、少しだけお話。
お忙しそうだったし、たくさんの人に囲まれていらしたので今回は一緒に写真を撮れず。
残念だが、打ち上げも始まりそうだったし仕方ない。
河村さんと「またそのうちに〜」と手を振り、ホールを後にした。
うん、本当に豊かな時間を過ごせてよかった。生はイイよ、やっぱり。
時間(と懐)が許す限り、やはりこういった機会には足を運びたい。まさに心の栄養。
そうそう、タイトルのコンクはコンクジュースのコンク。
吉松サウンド濃縮版、という意味です。私にはそう感じられた。
次はもう少しゆったりしたものも聴いてみたいな〜(笑)