一筋縄ではいかない

木暮荘物語

木暮荘物語

いわゆるオムニバス形式の小説。
登場人物が木暮荘という古いアパートを中心に描く相関関係と人間のおかしさ。
誰が主人公というのはなく、その一つ一つのエピソードで主人公が入れ替わっていく。
いや〜さすが三浦さんの小説は面白いです。
どの人も色が薄いのだけれども、いい人ばかりではない。
まほろ駅前便利軒もそうだったけれどビジュアルがすごく浮かぶ。
これって、作者がマンガオタクだってことにも由来するのでしょうかねぇ。
三浦氏の小説はビジュアル化しやすいだろうと思うぞ。
昔、放浪の旅に出て行った男が突然訪ねてきて、今の彼との奇妙な三角関係が始まったり
友人が死に際に残した言葉に触発されて「セックスしたい」と思ってしまう老人とか
一見チャラけた女子大生が無節操でだらしないけれども裏に持ってる理由とか
犬を介してやくざとの関係を持ってしまうトリマーの女性とか
そうそう、そうよね、という視点にあふれている。
いわゆる市井の人を描くというやつなんだが、なんとなくほのかに優しい。
優しいが辛辣でもあり、きれいごとではないというか。
でもやっぱり薄くて甘いトーンなんだな。早く「舟を編む」まわってこないかな。