表現と表現力

昨日「表現力はどこで養えば?」というご質問をいただきました。
そんな質問にお答えできる自信もありませんけれども、自分なりの考えを
述べることはできるかもなぁと思います。
前提として私自身が狭い世界でしか生きていないことをご承知おきください。
私は私が経験してきたこと、考えてきたこと、好みでしかお答えできないです。
そして何よりも大した人間ではありませんので、よろしくお願いします。
それからこういうお題は長くなる…くどかったら適当に飛ばしてくださいね。
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表現ってなんだろうなぁと改めて考えました。
表現力のあるなし、って言葉にするのは難しいけれども歴然とありますよね。
まずもって表現という時に軸が二つあるように思います。
一つは自分軸。もう一つは客観軸です。客観を観客と置き換えてもいいかも。
まず自分軸では、これはもうすべてが自分であるので「これでいいのだ」が
まかり通るものだと思います。
つまり自分がそう思ってやっているのだからそうであるに違いない、という
究極の自己満足の世界です。(私は概ねこちら側かなと思います。)
表記するととても極端なようですが、これがなくてはやっていられません。
そして、もう一つの客観軸。
こちらは観客、つまり自分以外の人にどう見えているかが問われるところ。
通常「表現」「表現力」ということを考えるときにはこちらだと思います。
これは「これでいいのだ」でなく「これでわかりますか?」と腰の低い
物言いのような、あくまで共通するものを求めるためのものでしょう。
共通するものを探すことは共感につながりますから。
つまり「自分の言いたいことを理解してもらい共感してもらうツール」が
表現であり、表現力だと考えます。
表現というのは文字通り「表れる現象」ですよね。
それがそう見えるかどうかという判断は自分以外の人にしかわからない。
自分を自分では見ることができないため他人の感覚に頼ることになります。
このあたりの歯がゆさはありますね。
そのあたりの判断を下すのが作者であり演出という人間です。
ですから自分の感覚に合った作者なり演出に出会えるかどうかが幸せへの道
ではないでしょうか。いや、ほんとに。
何を美しいと感じるか、何を面白いと感じるかの感覚が似ている、あるいは
惹かれる作家に出会うことが一番大事なことかもしれません。
表現力についてですが。
これはテクニックの一つであるのでひたすら研究、に尽きると思います。
例えば首を一つ傾げるしぐさ。右へ傾げる、左へ傾げる。
その時の目線を上げる、下げる、遠くを見る、伏せる…etc。
組み合わせは無限ですが、それがどう見えるかということはご自分で
ビデオかなんかにとって見てみるしかありません。
ただ、それがどう見えるかという判断に関しては難しいところです。
人間ですから。感覚は様々ですから。
私はこう見えてもあの人にはそう見えないとか、そんなことも多いです。
このあたりの感覚の違いまでも巻き込んで不特定多数の人に理解してもらう
てなことは不可能に違いない、と思ったりもします。
歌舞伎や能のように型があれば、それは受け手側とのお約束があるので
少しは楽な部分もあると思いますが、それでもやはり拙いものは拙いし
練れている人は練れているとわかりますね。それはどうしてでしょう?
バレエにおいてテクニック重視であるのは圧倒的なテクニックが表現に
つながる作品を前提にしているからです。
けれども、明らかに脇の人のほうがテクニック的に優れているのに
主役はこの人、という場合がありますね。それはどうしてだろう。
それはやはり「心」の部分と考えます。
どんな世界のものでも「心」が伴ってなければスカスカです。
もちろん心などなくても目を見張るようなテクニックに魅了されることもあるし
表現力というテクニックをもってすれば観客を騙しもできます。
けれども割とこの辺はすぐに見破られるものなんですよ。
テクニックだけの踊りは退屈です。かといってテクニックのない踊りも退屈。
要はバランスなのだと思います。
自分の中の自分軸と客観軸とのバランス。
テクニックと表現力のバランス。
でも、どんな踊りも心動かされるのはテクニックじゃない部分だったりもして…
見るなら心が伴っているものを見たいと思いますし、やりたいと思っています。
そういえば時折、教えていて感じることがあります。
表現や表現力とは少し違うかもしれないけれども、いわゆる「踊っている人」。
そうでない人との違いは「自分の世界で遊べているかどうか」です。
よしんば、それが独りよがりなものであっても独自の世界で揺れることの
できる人は少なくとも人の目を気にして、あるいは次の振りばかり考えて
動いている人とは全く違うものが出ています。
案外、これが答えかもしれないなぁ。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
お会いする機会がありましたら必ず声かけてくださいね。